あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
【あなたは私の夫じゃない】
 そして、1週間後の花火大会の前日。
 灯樹はときよ屋に強志がいるかもしれないと訪れた。
 「瑠宇斗さん。豪火之神様はいますか?」
 「今日、強志さんは来ていませんよ」
 「そうですか・・・しばらくは来ないですか?」
 「いえ、何も無くても来て直ぐ何処かに行くことは常なので。来ない時も、鬱陶しいほど、連絡は来ますけどね」
 自分は来ても会えず、今までも、そして先日会ってからも、神使の力で呼びかけても返事も無いというのに・・・
 「あなたが羨ましいですよ。神々は手放したくなかったのに、あなたは人間になることを選んだ・・・人間になった今も類い希な頭脳に身体能力を兼ね備えている。そして、豪火之神様の信頼を受け、家族とまで言わせた・・・人間になってまで神に選ばれて・・・それも私の親愛なる豪火之神様に・・・」
 話していくうちに、灯樹自身も気づかないうちに、別の意識に支配され始めていた。
 「・・・灯樹さん・・・どうされました?」
 「・・・どうして・・・どうして・・・」
 「灯樹さん・・・?」
 「・・・はっ・・・私、何か言いましたか?」
 「俺が羨ましいとか・・・俺にしてみたら、灯樹さんの方が羨ましいですよ。人間社会でも神使としてお仕えされているのですから・・・」
 「い、いえ、私なんて全然・・・でもいつか豪火之神様のお仕事をお手伝い出来るようにと、お会いした日から努力しています」
 「そうですか。頑張って下さい」
 「瑠宇斗!次の仕事のことだが!」
 その時、お客がいないことを確認した強志が、大きな声で店に入って来た。
 「強志さん。ここはお店なんですから・・・いつも言っていますが、俺はここの仕事と癒怒之神様の命もあるし、つい先日、大きなプロジェクトを急ぐからと納期3ヶ月短縮させたでしょ?」
 「そういうなよ。俺は今、お前の力無しじゃ困るんだ」
 「・・・強志さんの部下に頼んで下さいよ」
 「何言ってる!お前ほど優秀な部下はいない!」
 「いつから俺は部下なんですか?」
 「違ったな、可愛い甥っ子だ。明日一緒に花火大会に行くか?」
 「しつこいです。先週ダメだと言ったでしょ?どうして、鬱陶しい叔父さんと一緒に行かないといけないんですか?」
 「おっ、反抗期か?生意気さも可愛いぞ!」
 「はぁ・・・瑞穂、何とかしてくれ・・・」
 「いつもの事じゃないですか・・・愛を感じます」
 「だろ?瑞穂ちゃんはさすが、瑠宇斗が選んだ嫁だな」
< 168 / 192 >

この作品をシェア

pagetop