あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「・・・俺は父を知らないし、母は小さい頃に病気で亡くした。母はいつも俺が幸せになることを願っていたよ。瑞穂・・・瑞穂が笑顔で過ごせることが、お父さんもお母さんも1番嬉しいんじゃないか?」
 瑠宇斗は瑞穂に頬笑みかけた。
 「ここで過ごしている瑞穂は・・・俺が毎日見ている瑞穂は、楽しそうだ。本当は自分の中で、答えが出ているんじゃないのか?」
 そう・・・自分でも分かっている。もう答えは出ていた。
 でも、両親に迷惑をかける。また心配掛けるんじゃないかと、相談出来なかった。
 「もう1度聞くぞ。瑞穂はどうしたい?」
 「ここに・・・まだここに残りたい・・・」
 本心を初めて言えた瑞穂は、心に溜まっていたものが涙と一緒に溢れ出した。
 「じゃあ、その気持ち、ご両親と登喜代さんに伝えてみたらどうだ?まずはそこからだ」
 「はい・・・」
 瑠宇斗は頭を撫でて、抱き寄せた。
 「よし、いい子だ・・・」
 瑞穂は溢れる涙が止まるまで、瑠宇斗の腕の中で泣いた。

 その後、瑞穂は瑠宇斗と一緒に登喜代にここに残りたいと伝え、登喜代は瑞穂と一緒に電話で両親に説明し、ときよ屋に残ることを承諾してもらった。
 「じゃあ、登喜代さん。俺帰りますから」
 「瑞穂の気持ちを楽にしてくれてありがとうね、瑠宇斗君」
 「瑠宇斗さん、明日からもお願いします」
 「これからも宜しくな、瑞穂。失礼します、登喜代さん」
 瑠宇斗は2人に挨拶すると、入り口に向かった。
 「ほんと、いい男ね、瑠宇斗君」
 囁く登喜代の言葉に、瑞穂は瑠宇斗の背中を見つめたまま、
 「うん・・・本当に・・・大す・・・」
 『大好き』と言いかけた瑞穂は、ハッっと口を噤んで言葉を止めると、顔に火がついたように真っ赤になった。
 「や、優しいよね、瑠宇斗さんて。か、片付け残ってるから、終わらすね!」
 「そうね、お願いね」
 慌てて2階に上がって行く瑞穂に、登喜代は笑顔を向けたあと、店の入り口を見ながら呟いた。
 「初恋の相手があやかしか・・・」
 瑞穂の想いが届くことを願うも、複雑な気持ちで厨房に入っていった。
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