あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
【看板娘の誕生】
 「あと1週間か・・・」
 開店準備のため、瑞穂はいつものようにテーブルを拭いていた。ここに来てから、毎日の行動は自然と身につき、客がときよ屋で過ごすひとときで心が癒やせたらと、登喜代と色々考えて過ごすことが楽しくなってきていた。そして何よりも・・・
 「瑞穂、表の掃除は俺がするよ」
 「はい、お願いします」
 瑞穂の肩にポンッと手を乗せ、表に出る瑠宇斗の背中を見つめた。
 何気ないこの時間を過ごせるのがあと1週間・・・
 瑠宇斗が外で掃除をする姿を見つめていると、胸がギュッと締めつけられる。初めて味わう胸の苦しみ・・・これがきっと・・・

 自分の都合の良いように言い訳していた瑞穂の心は、揺らいでいる。
 就活を途中で辞めた瑞穂は、自分の弱さを色々な理由を付けて言い訳していた。
 本当に行きたかった会社には、友人達が内定を貰った。
 特にやりたい職業もなかったから、通勤が楽な会社の面接を受けた。
 面接を受けている時、何してるんだろうと自分事じゃないように、ただ口を流暢に動かしていた。中身が空っぽだった。
 そして、若いうちにしか出来ないことを経験したいからと、お父さん達に就活を先延ばしするための言い訳に選んだ語学の勉強。友人への体裁のために選んだカナダ行き。でも・・・一体何を目指して行くんだろう・・・

 「瑠宇斗さん」
 「どうした?」
 「私ね、本当は語学を勉強したくて、海外に行くんじゃないんだ・・・」
 「何か・・・別に理由が?」
 「逃げたくなっちゃった・・・からかな」
 「そうか・・・俺は逃げることが悪いとは思わないよ」
 「そう・・・ですね」
 瑞穂の遠くを見て悩む様子に、瑠宇斗がそばに寄って語り掛けた。
 「瑞穂?」
 「ごめんなさい・・・色々と考えちゃって・・・」
 「瑞穂はどうしたい?」
 「分からない・・・でも、お父さんとお母さんに何て言おうかなって・・・お願いして決めたことなのに、今更行かないって言ったら、困らせちゃうかなって」
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