愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
今日も夕飯を済ませると、瑞樹さんが皿を洗ってくれる。私は早々にウェルネスルームに移動し、お香を炊いていた。
瑞樹さんがやってくる。すると、すれ違いざまについぴくりと肩が震えてしまった。
昼間、トキさんにあんなことを言われたせいだ。なんだか、今日はやたらと瑞樹さんに反応してしまう。
瑞樹さんはいつもと様子が変わらない。
当たり前だ。なにかがあったわけでもないし、そもそも〝愛されている〟なんてありえない。
カモミールとベルガモットの香りで気持ちが落ち着くと、すぐにそう思うことができた。
瑞樹さんは今日も、いつものようにソファに座ってタブレットを操作する。
「今日はなにを見るんですか?」
すると、瑞樹さんはこちらを見て、それから困ったように眉をひそめた。
「症例を見るつもりだが、悪いが今日はひとりにしてくれないか? それから、明日からしばらく帰りが遅くなる」
そういえば、もうすぐ瑞樹さんには大きなオペの予定がある。
「執刀の準備ですか?」
「ああ。思っていたよりも難しい手術になりそうなんだ。悪いな」
瑞樹さんは私の問いに、顔を歪めながらそう言う。
「いえ、とんでもないです。お邪魔してはいけないので、私はこれで」
ぺこりと頭を下げ、ウェルネスルームを出ようとドアノブに手をかけた。
「万智」
不意に名前を呼ばれ、胸が跳ねてしまう。振り返ると、瑞樹さんは真剣な顔をしていた。
「もし鴎川になにかされたら、すぐに伝えてくれ。〝夫婦として〟共有してほしい」
「……わかりました。おやすみなさい」
そう言って部屋を出たが、心の内は寒々としていた。
瑞樹さんは、私のために言ったのではない。次期院長になるために必要な情報だから、共有してほしいと言っただけだ。
ついため息をこぼしそうになったが、慌ててそれをのみ込んだ。
なにを寂しいなんて思っているのだろう。私は、瑞樹さんを支えるのが仕事だ。それ以上のものを求めようなんて、どうかしている。
瑞樹さんがやってくる。すると、すれ違いざまについぴくりと肩が震えてしまった。
昼間、トキさんにあんなことを言われたせいだ。なんだか、今日はやたらと瑞樹さんに反応してしまう。
瑞樹さんはいつもと様子が変わらない。
当たり前だ。なにかがあったわけでもないし、そもそも〝愛されている〟なんてありえない。
カモミールとベルガモットの香りで気持ちが落ち着くと、すぐにそう思うことができた。
瑞樹さんは今日も、いつものようにソファに座ってタブレットを操作する。
「今日はなにを見るんですか?」
すると、瑞樹さんはこちらを見て、それから困ったように眉をひそめた。
「症例を見るつもりだが、悪いが今日はひとりにしてくれないか? それから、明日からしばらく帰りが遅くなる」
そういえば、もうすぐ瑞樹さんには大きなオペの予定がある。
「執刀の準備ですか?」
「ああ。思っていたよりも難しい手術になりそうなんだ。悪いな」
瑞樹さんは私の問いに、顔を歪めながらそう言う。
「いえ、とんでもないです。お邪魔してはいけないので、私はこれで」
ぺこりと頭を下げ、ウェルネスルームを出ようとドアノブに手をかけた。
「万智」
不意に名前を呼ばれ、胸が跳ねてしまう。振り返ると、瑞樹さんは真剣な顔をしていた。
「もし鴎川になにかされたら、すぐに伝えてくれ。〝夫婦として〟共有してほしい」
「……わかりました。おやすみなさい」
そう言って部屋を出たが、心の内は寒々としていた。
瑞樹さんは、私のために言ったのではない。次期院長になるために必要な情報だから、共有してほしいと言っただけだ。
ついため息をこぼしそうになったが、慌ててそれをのみ込んだ。
なにを寂しいなんて思っているのだろう。私は、瑞樹さんを支えるのが仕事だ。それ以上のものを求めようなんて、どうかしている。