愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「自分のミスをもみ消したかっただけじゃないのか? 初日の診断の時にCTを撮っていたら、もっと早く気づけたかもしれない」
俺は怒りのあまりに敬語も忘れて彼に詰め寄る。翼はちょっとだけ嫌そうな顔をしたけれど、すぐに再び笑みを浮かべた。
「たまたま望田先生がいた。そして手術を行った。胆石もあったから私の診断も間違っていなかった。それでいいじゃないか」
「いいわけないだろう。小玉先生が相談に来てなかったら、今頃どうなっていたことか」
つい声が硬くなる。だが、翼は俺の声が聞こえていないのかのように、顔色を変えない。それが、俺の苛立ちを煽る。
「自分の分野だけで患者を診るな。ここは総合病院だ」
医師として、患者を救うということをなんだと思っているのだろう。今回のようなことが再びあったら、どうするつもりなのだろうか。
そんな思いで告げると、翼は俺を小馬鹿にしたようにふっと息をもらす。
「だから、望田先生みたいな医者〝も〟必要なんだよ。仕方がないことだけれど」
彼はそう言うと、その身を翻して医局のドアノブに手をかける。だが扉を出る直前で、振り返った。
「今回のことをどこかに流そうとしても無駄だよ、腕〝だけ〟は一流の望田先生」
そのいけ好かない笑みに、有明会で見せられた沙久良の顔が重なる。すると、彼女が万智に放ったひどい言葉の数々を思い出した。
万智もきっと、俺と同じ思いをしているのだ。
彼はそのまま医局を出て行く。扉が閉まる音を聞きながら、俺はひどく憤りを感じた。
鴎川一家の君臨する病院の、闇を葬るシステム。患者のために、そんなものはなくさなければならない。
父を見返すためという動機は、もうとっくに消え去っていた。
万智を守るため、そしてこの病院を守るため――なにがなんでも鴎川家の闇を暴き、鴎川一家を病院から追い出さなくては。
俺はそう、心に固く決意した。
俺は怒りのあまりに敬語も忘れて彼に詰め寄る。翼はちょっとだけ嫌そうな顔をしたけれど、すぐに再び笑みを浮かべた。
「たまたま望田先生がいた。そして手術を行った。胆石もあったから私の診断も間違っていなかった。それでいいじゃないか」
「いいわけないだろう。小玉先生が相談に来てなかったら、今頃どうなっていたことか」
つい声が硬くなる。だが、翼は俺の声が聞こえていないのかのように、顔色を変えない。それが、俺の苛立ちを煽る。
「自分の分野だけで患者を診るな。ここは総合病院だ」
医師として、患者を救うということをなんだと思っているのだろう。今回のようなことが再びあったら、どうするつもりなのだろうか。
そんな思いで告げると、翼は俺を小馬鹿にしたようにふっと息をもらす。
「だから、望田先生みたいな医者〝も〟必要なんだよ。仕方がないことだけれど」
彼はそう言うと、その身を翻して医局のドアノブに手をかける。だが扉を出る直前で、振り返った。
「今回のことをどこかに流そうとしても無駄だよ、腕〝だけ〟は一流の望田先生」
そのいけ好かない笑みに、有明会で見せられた沙久良の顔が重なる。すると、彼女が万智に放ったひどい言葉の数々を思い出した。
万智もきっと、俺と同じ思いをしているのだ。
彼はそのまま医局を出て行く。扉が閉まる音を聞きながら、俺はひどく憤りを感じた。
鴎川一家の君臨する病院の、闇を葬るシステム。患者のために、そんなものはなくさなければならない。
父を見返すためという動機は、もうとっくに消え去っていた。
万智を守るため、そしてこの病院を守るため――なにがなんでも鴎川家の闇を暴き、鴎川一家を病院から追い出さなくては。
俺はそう、心に固く決意した。