愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
やがてクーペはホテルに到着する。瑞樹さんは先に運転席を降り、助手席の扉を開けて私をエスコートしてくれた。
パーティー会場に着くと、私はすぐ入り口の花に目を向けた。私が生けた時となにも変わっていないことに、少しだけ安堵する。
だがすぐ、傲慢な笑い声が耳に入り、不安が胸をよぎった。
「いやあ、本当に望田先生はどこに行ってしまったんでしょうねえ」
声の主の姿は見えないが、おそらく副院長だろう。「そろそろ挨拶の時間だ」と、声の主は会話を切り上げる。
瑞樹さんはそれを気にする様子もなく、堂々とした佇まいのままだ。彼は私の腰をしっかりと抱き寄せると、スタッフが開いた重厚な扉の向こうへと私をいざなう。
大丈夫、瑞樹さんを、信じるのよ。
私は心の中で何度も唱え、彼とともに、胸を張って会場の中へと足を踏み入れた。
『ええ、本日はご多忙の折、かくも盛大に――』
照明が落とされた会場の中。正面の演壇で、スポットライトを浴びる院長の姿が、遠目にもはっきりと見えた。
彼はいつも通りの人当たりのよい笑みを浮かべ、先ほどの会見の内容、さらに患者に対する思いを述べている。
壇上には鴎川夫妻が並び、その傍らには、私の父の姿もある。父はいつもの威厳を保とうとしているが、その口元にはわずかな不安がにじんでいた。
瑞樹さんは院長の挨拶を眉間に皺を寄せ聞いている。だが、それが締めくくられようとした時。
「行くぞ、万智」
私の耳元で低く自信に満ちた声で囁き、私の腰を抱き直すと、前方へと移動し始めた。
パーティー会場に着くと、私はすぐ入り口の花に目を向けた。私が生けた時となにも変わっていないことに、少しだけ安堵する。
だがすぐ、傲慢な笑い声が耳に入り、不安が胸をよぎった。
「いやあ、本当に望田先生はどこに行ってしまったんでしょうねえ」
声の主の姿は見えないが、おそらく副院長だろう。「そろそろ挨拶の時間だ」と、声の主は会話を切り上げる。
瑞樹さんはそれを気にする様子もなく、堂々とした佇まいのままだ。彼は私の腰をしっかりと抱き寄せると、スタッフが開いた重厚な扉の向こうへと私をいざなう。
大丈夫、瑞樹さんを、信じるのよ。
私は心の中で何度も唱え、彼とともに、胸を張って会場の中へと足を踏み入れた。
『ええ、本日はご多忙の折、かくも盛大に――』
照明が落とされた会場の中。正面の演壇で、スポットライトを浴びる院長の姿が、遠目にもはっきりと見えた。
彼はいつも通りの人当たりのよい笑みを浮かべ、先ほどの会見の内容、さらに患者に対する思いを述べている。
壇上には鴎川夫妻が並び、その傍らには、私の父の姿もある。父はいつもの威厳を保とうとしているが、その口元にはわずかな不安がにじんでいた。
瑞樹さんは院長の挨拶を眉間に皺を寄せ聞いている。だが、それが締めくくられようとした時。
「行くぞ、万智」
私の耳元で低く自信に満ちた声で囁き、私の腰を抱き直すと、前方へと移動し始めた。