愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
 ベッドルームに入り、彼女をベッドの上にそっと横たえる。彼女のとろんと蕩けたような表情が、俺の欲情を煽る。

 彼女に覆いかぶさると、俺は彼女の唇にそっと唇を重ねた。急ぎ過ぎては、彼女を壊してしまうかもしれない。ゆっくりと、彼女の体温を味わいたい。

「瑞樹さん、もっと……」

 ああ、そんなことを言われたらたまらない。
 逸る気持ちで服の裾から手を差し込み、彼女の肌に触れた。柔らかな感触にほうとため息をこぼしながらも、そのまま優しく服を脱がせてゆく。

 彼女の煽情的な姿を見て、俺はごくりと喉を鳴らした。

「あんまりみないでください。恥ずかしい……」

「恥ずかしがられると、俺は余計に煽られる」

「そん、な……」

 万智は恥ずかしそうに、胸元を隠す。
 俺は一度起き上がり、自身の服を脱ぎ捨てた。

 するとふと、ベッドサイドのチェストが目に入る。その上には、万智がこの一週間つくってくれていた、夕飯と朝食のメモ――そして、俺の汚い字で書き記された、お礼の文字が残っていた。

 こんなものを、大切に取っておいてくれたのか。そう思っただけで、体中を万智に支配されたような気分になる。

 俺はまだ恥ずかしそうに自身の体の上を這う万智の両手を、彼女の片手で優しくシーツに縫い留める。

「万智のすべてが欲しい」

 耳元でそう告げると、万智は俺を潤んだ瞳で見つめてきた。

「私も、瑞樹さんが欲しいです」

 そんなことを言われては、心も体も余裕が無くなってしまう。俺はかわいいいことばかりを口走るその愛しい唇に、深く深く愛の印を刻み込む。

「今夜は、離したくない」

 俺はそう宣言し、万智と初めての夜に溺れた。

< 166 / 173 >

この作品をシェア

pagetop