愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
 瑞樹さんが帰宅する。夕食の準備をしながら、有明会の会合にこの部屋を使いたいと伝えると、すぐに了承してくれた。
 そんな彼は、今日もリビングのテーブルに置かれたアレンジメントに目を留める。

「また、つくったのか?」

 その言葉に、思わず肩を震わせた。この間のアレンジメントも、実は迷惑だったのではないかと頭によぎる。

「はい、すみません」

 だが、彼はそのままアレンジメントにそっと顔を近づけた。

「あのお香と同じ香りがする。いいな」

 彼は言いながら、こちらを振り返る。その顔が、なんだかとても優しいものに見える。
 途端に、胸がひときわ大きく高鳴った。

 また、だ。どうして彼に褒められるだけで、こうも鼓動が反応してしまうのだろう。

「ありがとう、ございます……」

 速まってしまった鼓動を落ち着けてから声を出したはずなのに、絞り出したような声しか出ない。
 でも、心の奥では安堵していた。

 お花に触れて気持ちを落ち着けても、沙久良さんに言われた言葉が胸に刺さって抜けないでいた。だけど、彼の言葉が私の行動を認めてくれただけで、なんだか救われたような気持ちになる。

 瑞樹さんがいいといってくれたのだから、きっと大丈夫。きっと今日調合した香水も、間違いではなかったはずだ。

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