愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
余ってしまったヒペリカムは理事長室に生けた。
父の部屋に飾られた桃色の実は、無機質な空間にほんの少しの温かさを添えてくれる。けれど、私の胸の内にはまだ、靄がかかったままだ。
――『有明会の恥』。
沙久良さんに投げつけられた言葉は、私の管理の甘さを物語っている。
私が今日も朝からお花の様子を見に行っていれば、異変に気づけたのではないか。そんな思いが、胸を支配する。
私は気持ちを切り替えたくて、帰宅前に花屋へ寄った。
先ほどヒペリカムを用意した時に、目に入った花がある。モナルダと、カモミールだ。
モナルダはベルガモットに似た香りがする。このふたつの花の香りは、いつも炊いているお香と同じなのだ。
帰宅し、さっそくフラワーアレンジメントをつくる。
モナルダは薄い紫色の花材を選んだ。黄色い花托に白い花弁が鮮やかなカモミールと合わせて、間にグリーンが見えるように配置する。
主役として配置したのは一輪の青いトルコキキョウだ。幾重にも重なった花弁が存在感を放ちながらも、青という引き締まった色味がなんとなく瑞樹さんのようだと思った。
優しい香りの花に触れていると、自然と気持ちが落ち着いてくる。
沙久良さんの言葉を真に受けてどうするの? こんなこともあるだろうと、最初からわかっていたじゃない。
完成したアレンジメントを前に、目を瞑って深呼吸する。甘く爽やかな香りをいっぱいに吸い込んで、また明日からも頑張ろうと決意する。
するとその時、テーブルに置いていたスマートフォンが震えた。メッセージの主は、沙久良さんだ。
【次の有明会の会合、万智さんの自宅でできないかしら? 有明会の新入会員は、自宅でお茶会を開くことになっているの】
私はつい、この場所に沙久良さんがいるところを想像してしまった。
ぶるりと体が震えたけれど、それではダメだ。頑張るんだと、決めたじゃない。
私はもう一度、彼女からのメッセージに向き直る。指定されたのは、瑞樹さんが学会で家にいない日だった。
きっと彼なら了承してくれるだろう。だが念のため、瑞樹さんに尋ねてから返事をする旨を彼女に返した。
父の部屋に飾られた桃色の実は、無機質な空間にほんの少しの温かさを添えてくれる。けれど、私の胸の内にはまだ、靄がかかったままだ。
――『有明会の恥』。
沙久良さんに投げつけられた言葉は、私の管理の甘さを物語っている。
私が今日も朝からお花の様子を見に行っていれば、異変に気づけたのではないか。そんな思いが、胸を支配する。
私は気持ちを切り替えたくて、帰宅前に花屋へ寄った。
先ほどヒペリカムを用意した時に、目に入った花がある。モナルダと、カモミールだ。
モナルダはベルガモットに似た香りがする。このふたつの花の香りは、いつも炊いているお香と同じなのだ。
帰宅し、さっそくフラワーアレンジメントをつくる。
モナルダは薄い紫色の花材を選んだ。黄色い花托に白い花弁が鮮やかなカモミールと合わせて、間にグリーンが見えるように配置する。
主役として配置したのは一輪の青いトルコキキョウだ。幾重にも重なった花弁が存在感を放ちながらも、青という引き締まった色味がなんとなく瑞樹さんのようだと思った。
優しい香りの花に触れていると、自然と気持ちが落ち着いてくる。
沙久良さんの言葉を真に受けてどうするの? こんなこともあるだろうと、最初からわかっていたじゃない。
完成したアレンジメントを前に、目を瞑って深呼吸する。甘く爽やかな香りをいっぱいに吸い込んで、また明日からも頑張ろうと決意する。
するとその時、テーブルに置いていたスマートフォンが震えた。メッセージの主は、沙久良さんだ。
【次の有明会の会合、万智さんの自宅でできないかしら? 有明会の新入会員は、自宅でお茶会を開くことになっているの】
私はつい、この場所に沙久良さんがいるところを想像してしまった。
ぶるりと体が震えたけれど、それではダメだ。頑張るんだと、決めたじゃない。
私はもう一度、彼女からのメッセージに向き直る。指定されたのは、瑞樹さんが学会で家にいない日だった。
きっと彼なら了承してくれるだろう。だが念のため、瑞樹さんに尋ねてから返事をする旨を彼女に返した。