愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「万智だって嫌がらせが続いたらつらいだろう。俺は――」

「いえ、それでは瑞樹さんの立場が悪くなってしまうかもしれません」

 万智は俺の言葉を遮り、堂々とした口調で言う。

「私は瑞樹さんが院長の座に座れるよう、しっかりサポートしないといけませんから」

「だが――」

 万智の身を、心を傷つけるようなことがあってはいけない。そう思って口を開いたのに、この言葉も万智に遮られてしまう。

「私は大丈夫です! 病院内のお花のお世話は好きですし、沙久良さんのことだってなんでもないですよ」

「……そうか」

 そこまで言われては、無理に抜けろと言えない。強制的に抜けさせようとしたところで、彼女のことだ。俺に黙って有明会に行くことさえ考えられる。

 万智は、俺のために有明会を続けると言ってくれているのだ。だったら、俺ができることは――。

 しばし考え、俺はそっと口を開いた。

「わかった。有明会のことは君に任せる。だが、俺の要望も聞いてくれ」

「なんでしょう?」

 俺がなにを言うのか見当もつかない様子の彼女に、俺ははっきりと告げた。

「今度、ふたりで出かけよう」

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