バレンタインはキスをして
「当たり前だろ。一回で終わるかよ」

「あの。なんて言ったらいいのか……。でもやっぱり……せっかくお誕生日だし二人でお出かけしたいな……」

「……まあな。てか俺も美弥と二人きりで行きたいとこあんだよな」

「そうなの、じゃあそこ行こ?」

一瞬頷きかけたが、颯はまた顎に手をかけ思案する。

「……でもさぁ。マジでこのいくらでも抱き放題っていう絶好のシチュエーションに、もう一人の俺が美弥をはやく襲えって言ってる気もしたりしなかったり」

「もうっ。そんなことばっかり言って」

ポカっと拳で痛くないように叩くと颯がクスッと笑って、今度は頬にちゅっとキスを落とす。

「わかった。夜まで我慢する。じゃあ俺とデートして?」

颯が私を覗き込むと、唇を引き上げ優しく目を細める。

「美弥?」

返事を促すように名前を呼ばれて、顔がまた火が出たように熱い。

「私で……良かったら是非」

ちゃんと颯の目をみてそう答えれば、颯が思い切り口元を覆った。

「はぁあ……」

「颯?」

「ほんと美弥って……無自覚に煽ってくるよなー……いつ直んだよ、それ……いや直んなくていいんだけどさー」

「え? 何のこと?」

キョトンとしている私を見ながら、颯がぶんぶんと煩悩を振り払うように顔を振ってから、ネクタイを締め直す。
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