ポンコツ御曹司の初恋は…
「先輩、お洒落して今夜はデートの予定ですか?」

今日は29歳の誕生日。
五年付き合ってた彼から、ディナーに誘われた。
付き合い始めた頃、『将来のことは考えてるけど、まだまだ仕事を頑張りたいし、もう少し待ってて』なんて言われてしまって、ほんとはもう少し遊びたいんだろうな、とは思っていた、…けど。
優しくて優柔不断、押しに弱いところもあるけれど、今では営業成績もトップで同期のなかでは一番に主任になって、なんとか落ち着いてきたみたい。来年あたりは係長なんじゃないかと言われている。
そろそろ今夜あたりプロポーズかな、なんて考えてお泊まりの準備も用意していたのに。

「朝礼を始めるぞ」
課長の声で皆が動き出した。

いつものように今週の反省とと来週の予定、代わり映えのしない内容のあと、「あと、鈴木…」

えっ、なんで堅太郎と美玖ちゃんが…。

「鈴木と白石が結婚することになった。授かり婚らしい」

なんで?
なんでみんな、拍手してるの?
さっきまで美玖ちゃん、話してたよね?
堅太郎は目をそらせてるし、美玖ちゃんはわざわざこっちを見て微笑んでる。
「結婚することになりましたが、今以上に仕事を頑張りますのでよろしくお願いします」
緊張してる堅太郎の横で美玖ちゃんが、
「これからは体調悪くなった時なんかはお手伝いよろしくお願いしま~す」

回りからは、『元々仕事なんてやってなかったよね』、『産休までいなくても、どうせ辞めるって言ってたんだから早く辞めれば良いのに』なんて聞こえてくる。

彼女の教育係だった私にも、『先輩、私に仕事はそんなに教えてもらわなくても大丈夫ですよ。さっさと素敵な彼氏見つけて辞めるんで』何て言ってたのを思い出した。

営業の堅太郎から来る仕事を営業事務の私がやる流れで付き合い始めた。
確かに最近の連絡は美玖ちゃんも、いや、ほとんど美玖ちゃんが取ってたかもしれない。

「あと、今日の午後から…」
課長の声が遠くから聞こえていた。
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