ポンコツ御曹司の初恋は…
「瀬戸さん、仕事終わった?」
急に後ろから声がした。
周りからの視線も半端ない。
連絡しなかった私も私だけど、せめてエレベーター前とかエントランスで待っててほしかった。

「エントランスで待ってて」
隣でにやけている薫を無視して、大急ぎで片付けて、ロッカールームまで走って行った。

先日一緒になった定食屋、夜は居酒屋になっていた。
「ここ、司ともたまに来るんだ」
こんな庶民のお店にも来るんだ。
「瀬戸は飲める?」
少しくらいなら。
「ここの里芋の煮物、旨いよな」
ランチの時にも付いてきてたっけ。
「俺、ぬた好きなんだよな」
私はこんな話をするために来たのではない。

「柏原君は何をどこまで知ってるの?」
すると彼はにやけて、「うーん、たぶん瀬戸が知らないことも知ってる」
知らないことって…。
「司から何て言われた?」
何てって、はっきりセフレとは言われてないけど、付き合ってほしいとかも言われてない。
「なにも…」
パートナーとか遠回しに言われたけれど、同級生にセフレとは言いたくない。
「やっぱ司らしいは。アイツ悪気はないんだけど、へたれってか…」
最後の方はよく聞こえなかったけど、司らしいってことは、セフレって、一人じゃないのかな?
とりあえず愛人は却下だから柏原君に伝えてもらおう。「司さんに、『この前の話しは無かったことにしてください』って、伝えてください」

「なにも…て、言わなかった?」
柏原君はそんなことを言いながら、のんきに枝豆を食べている。
そんなのセフレなんて言えるわけがない。

伝票を掴んで、慌てる柏原君を置いて店を出た。
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