ポンコツ御曹司の初恋は…
しばらくして、堅太郎の送別会を兼ねた同期会が行われた。

私たちのことはほとんど誰も知らなかったし、何も聞かれなかったけど、なぜか私の両隣が堅太郎と司さんになっている。
幹事の薫が決めたのかこっちを見てニヤニヤしているじゃない。
まったく、私も幹事のはずではなかったの?
堅太郎のところには同期の男性陣が、司さんのところには柏原君も居るから女性陣がたむろってる。
堅太郎、同性にも好かれてるからなあ。
美玖ちゃんのことがなければ、女の子達も堅太郎の周りに押し掛けていただろう。
司さんの隣には柏原君も居るから、いつもなら近付けない二人にお近づきになりたいんだろう。
おかげで二人からは話しかけられずにすみそうだ。
二人とも違う意味で人気者なんだ。
でも移動するにもしっかりガードされている。
私が立てば、ここに座りたい人はたくさんいるのに。

そろそろお開きの時、堅太郎が、「五月、送っていくから…」、耳元で囁いた。
すごく小さな声だったのに、「鈴木君、今日はもちろん二次会参加するよね。彼女は俺が送っていくから」
二人にだけ聞こえるような小さな声で司さんが言った。

もう関わって欲しくないのに絡んでくる。
「今日は薫と帰ります」
とにかく二人から離れたくてトイレに逃げ込んだ。

そこには念入りに化粧直しをしていた薫がいた。
「今日は柏原さんが送ってくれるって」
嬉しそうな薫を見て、こっそり店を出た。

駅に向かって歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「さっちゃん」
さっきまで柏原君と一緒に皆に囲まれていたのに。
「送っていくって、言ってただろ」
そうだけど…、司さんの考えてることが分からない。
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