ポンコツ御曹司の初恋は…
「ならさっちゃん、俺なんかどう?」
誰?
隣に人が居るのに気がつかなかった。
それになんで名前を知ってるの?
私が忘れてるだけで、もしかして知り合いなの?
あっ、そういえばマスターが呼んでたのを聞いていたからか。
でも『さっちゃん』って、小学生以来の呼ばれかただな。今ではおばあちゃんしかそう呼んでくれている人はいない。

「…なんてね。今日はとことん付き合うから飲も」
よくわからないけど、マスターも笑ってることだし悪い人ではなさそうだ。
安心したからか、今までのことを話し出した。
ずっと付き合ってた彼に浮気されて子供まで出来てたこと、その浮気相手が後輩だったこと、そもそも彼のことがほんとに好きだったのかわからなくなってきたこと。
ただ30歳を目前にして結婚ということに対して焦ってただけかも知れない。
初めてあった人だけど、関係の無い知らない人だからこそ何でも話せた。

「直ぐに結婚したくないなら、とりあえず俺のパートナーになってよ」
この人はいったい…?
「パートナーって?」
なにを言ってるのかわからない。
名前すら知らないし。
「俺の名前は司、伊集院司」
この人はエスパーですか?
でもなんかこの人、嫌じゃない。
今の嫌な気持ちを忘れさせてくれそう。

「今日は俺にご馳走させて。この出会いに」
もう、今日はとことん飲んでやる。

いつもよりいっぱい飲んだのにちっとも酔わないし、帰りたくない。
家に帰ればまた朝のことを思い出してしまう。

そんなことを考えていたら、
「もう遅いし、長居をしてると店にも悪いし、部屋で飲み直さないか? 仕事の都合で、まだ家が見つかってなくって、ここに住んでるんだけど…」
いつもの私なら考えられないけど、今日はすんなり受け入れられた。
明日はお休み、お泊まりセットまでもある。
素直に頷いてしまった。

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