ポンコツ御曹司の初恋は…
お風呂から上がって、鏡に映る自分の姿が目に入った。
量販店のスウェットの上下。
こんな色気もない部屋着、浮気されても仕方がないか…。
司さんもこんな私、手を出すはずがない。

「大丈夫?」
ドアの外から心配そうな司さんの声がした。
先に入らせてもらってるのに、長い間待たせてしまってる。
「遅くなってごめんなさい。直ぐに出ます」
急いで部屋に飛び出した。
「慌てなくても大丈夫。アルコールが入ってたしちょっと気になっただけだから」

「お誕生日おめでとう」
司さんの手には大きなバラの花束が、テーブルの上にはバースデーケーキがあった。
「今日中にお祝いできたな。遅い時間だけど少しくらいなら食べられるかな」
朝からの落ち込みから考えると、信じられない。
誕生日に花束まで貰って、まるでどっきりでも仕掛けられたみたいだ。

どうしたの?
慌てて司さんが近づいてきて抱き締められた。
「大丈夫? 嫌なら突き放していいから。でも、涙が止まるまで抱き締めさせてほしい」
なんか勘違いしているよ。
自分でも朝からのことはすっかり忘れていたし、泣いてるのにさえ気がつかなかった。
悲しいんじゃない。
ただ涙が出てきてるだけ。

「自分でもよくわからないの。でも、こうして司さんにお祝いをしてもらって凄く嬉しいの。ありがとう…」
司さんの腕に力が入った。

「ローソクに火を付けるから、願い事を考えながら火を消して」
今のところ結婚はまだいい。
でもやっぱり恋愛はしたい。
司さんとは…、仲良しになれますように。
考えながら29本のローソクの火を吹き消した。
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