陰日向に咲く儚花
そして、無事にわたしたちの元へ生まれて来てくれた我が子への初めてプレゼント。
名前は、"楓(かえで)"と命名した。
母子共に健康で特に何の問題もなく、予定通り一週間で退院する事が出来た。
それから家族揃って自宅に帰宅したわけだが、早速手伝いに来てくれたお義母さんは、初対面の孫を抱っこして既にメロメロだった。
「あら、まぁ〜!可愛いねぇ!もう美男子じゃない?!可愛いお目々はママ似かな?この眉毛の形は慈にそっくりだね!」
そう言いながら、とろけてしまいそうな程の笑顔で楓を見つめるお義母さん。
「とにかく、菫ちゃんは今は休む事が仕事だからね!授乳以外の事は、慈とわたしがやるから!」
そう言ってくれるお義母さんの言葉は心強かった。
わたしは上げ膳据え膳で、本当に授乳以外の事はしなくて良い状態で、まだまだ産後で身体がボロボロだった為、凄く助かった。
テキパキと動いてくれる優しくて頼りになる義母。
夜中はなかなか寝てくれないけれど、小さな手を添えながらしっかりと母乳もミルクも飲んでくれる息子の楓。
そして涙もろいけれど、優しく思いやりがあり、いつでもわたしの味方でいてくれる最愛の夫である慈。
わたしはそんな愛する人たちを眺め、心が穏やかで温かくなっていくのを感じた。
日の当たらないような場所で生きてきた自分は、今優しい陽の光に照らされながら生きている。
それは当たり前なんかじゃない。
慈との出会い、そして楓が無事に生まれてきてくれた事、この日々に感謝をしていこうと心から思えた。
「菫。」
寝室に入って来て、ベッドで横になるわたしの元へ歩み寄って来る慈。
それから、ゆっくりとベッドの脇に腰を下ろした。
「楓と出会わせてくれて、ありがとう。ちゃんと伝えられてなかったなって思って。」
慈はそう言うと、わたしの手を取り、ギュッと握り締めた。
「こちらこそ、楓と出会う為に支えてきてくれてありがとう。」
「いや···、俺なんて全然。出産の時に思ったよ。男って、本当に無力だなって。」
「そんな事ないよ。」
「だからこそ、それ以外の時に全力で菫と楓の事を支えていかなきゃなって、改めて思えたよ。」
そう言うと、慈はわたしの額にキスをした。
「あれ?おでこだけ?」
わたしがそう言うと、慈は「ははっ!」と笑い、義母が寝室を覗いていないかを確認してから、そっとわたしの唇に口付けた。
「菫、出会ってくれてありがとう。愛してるよ。」
そう言って、慈はわたしを抱き寄せ、わたしも慈の背中に腕を回し、抱きしめ合った。
わたしは本当に幸せでいっぱいだった。
これからどんな困難があっても、慈となら乗り越えていける気がした。
愛を再確認し合う、そんなわたしたちの様子を見ないフリをして、見守ってくれていた義母と楓に気付かないわたしたちは、もう一度唇を重ねたのだった。
―END―