陰日向に咲く儚花
(日向主任って、本当に洞察力があるというか、勘が鋭いというか······)
そう思い感心していると、日向主任は「ちょっとごめん。俺、行って来るわ。」と言い、竜介と沙瑛さんが居る方へと歩き出した。
「え、えぇ?!日向主任?!」
わたしは呼び止めようとしたが、時は既に遅し。
日向主任は竜介と沙瑛さんに歩み寄って行き「お疲れ様です!」と明るく声を掛けていた。
そんな日向主任の登場に「ひ、日向くん!」と慌てる竜介。
その隣に立つ沙瑛さんもかなり驚いていた。
「野花課長が衣料品売場に居るなんて珍しいですね!何かありましたか?」
日向主任の問いに「あ、いや、ちょっとね。」としどろもどろにはなる竜介は、あまりにも情けない姿だった。
「食品課長の担当売場は地下ですよ?食品と衣料って、何か接点ありましたっけ?」
「いや、うん、少し用事があってね!じゃあ、そろそろ戻ろうかな!柴原さん、あとは頑張ってね!」
そう言って、逃げるように立ち去って行く竜介に、「あ、わたしも仕事に戻ります。」と逃げていく沙瑛さん。
そんな二人の慌てようが面白くて、わたしは静かにクスクスと笑ってしまった。
「何だったんだろうね?」
そう言いながら戻って来る日向主任は、わたしにはあまりにも頼もしく見えた。
「日向主任って、面白いですよね。」
わたしがそう言って笑うと、日向主任は「あ、また笑ってくれた!」と嬉しそうに微笑んだ。
「俺、あーゆうの嫌いなんだよね。仕事サボってコソコソしたり、人を傷付けるような事を平気でする人。」
人を傷付けるような事···――――
もしかして日向主任は、今のでわたしが傷付いたと思ってくれたのだろうか。
「でも、野花さんはいいの?このままで。まぁ、俺が夫婦の問題に口を出せる立場ではないのは分かってるんだけど、俺···許せないよ。」
そう言う日向主任の表情には苛立ちが見え、わたしは自分のことで日向主任が怒ってくれている事が嬉しかった。
「このままでいいとは思ってないんですけど···、わたしもどうしたら良いのか分からなくて。」
わたしがそう言うと、日向主任は少しの間何かを考えたあと「俺で良ければ、話し聞くよ?」と言ってくれた。
「大したアドバイスも出来ないかもしれないけど、話しは聞けるし、話す事で野花さんの気持ちが少しでも軽くなるなら。」
日向主任の言葉に、わたしは嬉しさのあまり自然と頬が綻んでしまう。
わたしは「じゃあ、話し聞いてもらっていいですか?」と日向主任にお願いをしたのだった。