陰日向に咲く儚花
「①と書かれてる段ボールには、必ず"くじ"が入ってるので、くじを入れる箱を組み立てて、その中にくじをバラして入れてもらうところからお願いします。」
「じゃあ、まずこれを開ければいいんだね。」
そう言って、作業の為に持ち歩いているカッターを取り出し、段ボールを開けていく日向主任。
慣れないながらも、くじ用の箱を組み立て、連なっているくじを一つずつ切り取っては箱の中へと入れていく。
「なかなか地味な作業だね。」
「わたしはその地味な作業、意外と好きですけどね。」
そう言いながら、わたしは売価変更をするキャラクターくじの個数を数えていく。
キャラクターくじの売価変更は意外と面倒で、景品の数とくじの数を数え、両方の数が合っているかを確認するところから始まる。
稀にではあるが、間違えて多く景品を持って行かれてしまったり、知らない間に万引きされている事もある為、数が合わない事があったりするのだ。
すると、作業をしている中で近くの売場から雑談と笑い声が聞こえてきた。
その笑い声に聞き覚えのあったわたしは(まさか······)と嫌な予感がした。
明らかにお客様ではない雑談と笑い声に日向主任も気付いたのか「ん?」と言いながら、奥の通路から衣料品売場の方を覗き込んでいた。
「えっ、何で野花課長が?」
日向主任の呟きに、わたしは(やっぱり······)と苦笑いを浮かべる。
どうやら、竜介がこの3階の衣料品売場で働いている社員の沙瑛さんに会いに来ていたようだ。
「野花さん、あれ···野花課長だよね?」
「そうですね。」
「何で衣料品売場に来てるんだろう。」
「柴原さんに会いに来たんじゃないですかね。」
あっさりしたわたしの言葉に「えっ?!」と驚く日向主任。
日向主任は「それ、どういう事?」と困惑した表情を浮かべていた。
「そのままの通りですよ?」
「え、柴原さんに会いに来てるって···野花課長が何で?」
「愛妻家のふりするくらいなら、こういう事はもっと慎重にしてほしいものですよね。わたしが恥ずかしいですよ。」
わたしの言葉にすぐ察した日向主任は「野花さん、前からこの事知ってたの?」と言った。
「はい、もう一年くらいになりますかね。」
「一年?!···そうか、あの違和感はこれが原因だったのかぁ。」
なぜか一人で納得している日向主任に「違和感?」と訊くわたし。
日向主任はわたしの問いに「野花課長の"愛妻家"の話、ずっと違和感があったんだよね。話す内容が薄っぺら過ぎてさ。」と答えると、くじを全てバラし終わったようだった。