陰日向に咲く儚花
そして、アルコールなしの烏龍茶で「お疲れ様!」と乾杯をするわたしたち。
疲れから喉が渇いていた為、一杯目の烏龍茶はすぐに無くなってしまいそうだ。
「さっき、わたしの心配はしてくれましたけど、日向主任こそ大丈夫なんですか?」
わたしがそう言うと、お通しの枝豆をつまみながら、日向主任は「え、俺?」と言った。
「恋人とか奥さんとか、居ないんですか?」
わたしの言葉に「あぁ。」と何かに気付いたような様子を見せる日向主任は、「そんなの気にしなくて大丈夫だよ。」と言ってくれた。
「奥さんは居ないし、もう5年は独り身だから。」
「そうなんですか?でも、日向主任···モテますよね?」
「んー···否定は出来ない!」
そう言って笑って見せる日向主任に、わたしまでつられて笑ってしまう。
日向主任は、本当に色んな意味で"嘘"のない人だ。
「日向主任が着任する日、森田さんめちゃくちゃワクワクしてましたよ。」
「えっ?なんで?」
「イケメン主任が来る〜って。」
わたしがそう言うと、声を出し「あはははは!」と笑う日向主任は「森田さんにワクワクされてもなぁ〜。」と言って苦笑していた。
「でも、森田さんってみんなにあんな感じなんでしょ?」
「みんなにっていうより、男性社員に対してですね。特に役職がついた男性とか、"お気に入り"の人にはベタベタくっつく癖があるみたいです。」
「やっぱり?でもあれやめてほしんだよなぁ〜···、腕にくっついて来るの。やたらとボディータッチが多くて、お客様に勘違いされたら困るよ。」
日向主任はそう言ったあとで「元々、あーやってベタベタされるのは苦手だしね。相手が野花さんだったら、嬉しいけど!」と言って、悪戯な笑みを浮かべていた。
「シラフでもそんな事言えるんですね。」
「えっ、俺は別に口説こうとしてるとか、冗談で言ってるわけじゃないからね?そう思ったから、言っただけ。」
そう言って微笑む日向主任のその表情にいやらしさは無く、わたしはやはり新鮮で不思議な気持ちになった。
"男性と二人きり"は、本来であれば気を付けなくてはいけないところがあったり、危機感を感じさせる男性も居たりするけれど、日向主任にはそれが全く無かった。
本当にわたしの"話だけを聞きに来てくれている"、それが態度から伝わってくるのだ。