陰日向に咲く儚花

「そんな事より、本題に入ろうよ。野花さんの話、聞かせて?」

そう言って前のめりになり、テーブルに腕を乗せ話を聞く体勢を取る日向主任。

わたしは烏龍茶を口に含み、乾いた口の中を潤すと「そうですね。じゃあ···、聞いてくれますか?」と話をし始めた。

日向主任には、わたしが抱えてきた問題をそのまま話した。

家計状況、竜介が浮気をするようになった時期やきっかけ、竜介のわたしに対する態度、家庭内の状況、それから···――――

「義母からは、孫の催促が酷くて···。結婚して3年になるんですけど、一度も子どもを授かったことが無いので、わたしに問題があるからって病院で検査を受けるように言われ続けてます。勿論、わたしは検査を受けましたけど、病院では"問題ない"と言われて·······、でもそれを伝えても義母は納得してくれなくて、何件病院に行って何度検査を受けてきたか分かりません。」

わたしがそう話している途中、店員さんが注文していた料理を運んで来てくれた。

その瞬間、話は途切れさせたが、店員さんが居なくなると日向主任は「続けて?」と再び話し出せるようにきっかけをくれた。

「病院の先生からは、"ご主人にも検査を受けてもらったらどうですか?"って言われるんですけど、竜介は検査を受けようとしてくれなくて。義母も孫催促が激しいわりに、竜介には検査を受けさせようとしないんです。息子に問題があるわけないって···、全部わたしのせいになんですよ。ぜーんぶ、わたしが悪くて、子どもを産めないわたしが捨てられないのは、竜介が優しいからみたいです。」

わたしがそう言って、烏龍茶を飲み干すと、日向主任は「また烏龍茶でいい?」とわたしに確認した上で店員さんを呼び、「烏龍茶もらえます?」と注文してくれた。

「でもさ···、それって他責過ぎない?全部野花さんのせいにするのはおかしいでしょ。しかも、検査受けて"問題ない"って言われてるのに。それ、野花課長に何か問題あるんじゃない?としか考えられないけど。」

そう言ってくれる日向主任の言葉に、わたしは「わたしもそう感じてるんですけどね。」と、虚しく微笑んだ。

「······一つ、野花さんに訊いてもいい?」

話の内容が内容なだけに慎重になりながら訊いてくれる日向主任。
わたしは「はい、何ですか?」と返事をした。

「これ聞くのは失礼になっちゃうかもしれないけど······、野花さんは···、野花課長の子どもが欲しいと思ってるの?」

まさかの日向主任からの質問に、ハッとさせられるわたし。

わたし···、竜介の子どもが欲しいって、まだ思ってるんだっけ?―――――

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