陰日向に咲く儚花

そんな忙しない日々が続き、わたしがすぐに寝てしまうようになってから、慈と会話する時間は正直減っていた。

ただ、そんな中でもキスとハグだけは、欠かさないようにお互いに心掛けていたと思う。

本当はもっと慈と話しがしたい。
本当はもっと慈とコミュニケーションがとりたい。

しかし、そんな気持ちとは裏腹に身体がいう事をきいてくれなかった。

自分に(仕方ない。)と言い聞かせつつも、こんな自分が慈に飽きられてしまわないか不安に感じながら生活をしていたある日···――――

わたしがいつものように年賀ハガキ印刷の承りをしていると、レジ付近で雑談をしている森田さんと平川さんの声が聞こえてきた。

「ねぇ、そういえばさぁ、わたし···昨日、見ちゃったんだよね。」
「えっ、何なに?」
「帰りにさ、日向主任がギフトの小島(こじま)さんと一緒に居るところ。」

その森田さんの話に自然と耳がそちらへ傾いてしまう。

昨日の帰り?
慈がギフトコーナーの小島さんと一緒に居た?

「えっ、小島さんって、結構若い子だよね?」
「確か20代半ばくらいだったかなぁ?」
「でも、何で日向主任が小島さんと?そんな仲良かったっけ?」
「知らないけど、日向主任の車に乗り込んでたよ?」
「えぇ〜!それマジぃ?それは普通の仲ではないねぇ!」

そんな会話が聞こえてきながらも、わたしは平然を装いお客様の年賀ハガキ印刷の承りの対応をしていた。

(そういえば昨日、わたしはまた帰ってすぐに寝ちゃったから気付くのが遅くなっちゃったけど、慈から『ちょっと帰り遅くなる』ってメッセージきてたなぁ。それって···、小島さんを家まで送ってたからって事?)

頭の中は、その事ばかりがグルグルと廻る。

わたしは何とか最後までお客様の対応し、「ありがとうございます、またお越しくださいませ。」とお客様を見送ると、承った年賀印刷の申し込み書を片付け、売場へ戻ったのだった。
< 83 / 114 >

この作品をシェア

pagetop