迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「俺の予想より遥かに良い出来だな。フィーによく似合いそうだ。満足している」
「ありがとうございます。それではお屋敷に配達するよう手配いたしますね」
店員は蓋を閉じると箱を持っていなくなる。
力が抜けたフィリーネはソファの背もたれに背中を沈めた。
「あんな豪奢な宝飾品は初めて見ました。私が身につけて本当に良いんですか。宝の持ち腐れでしょうに」
何がおかしいのかシドリウスはくすくすと笑いだす。
「宝の持ち腐れなんかじゃない。あれはフィーのために俺が作らせたんだ。お前以外に誰があれをつける? 一式持っておいて困らない品だし、あれくらいは普通だ。それに、フィーの晴れ舞台を一緒に準備できて俺は嬉しい」
面映い表情を浮かべるシドリウスに、フィリーネはハッとした。
どこの店でも気後ればかりして、彼の好意を無碍にしてしまっていた。
純粋に買い物を楽しめば良かったのに、申し訳ない気持ちが勝ってできていなかった。
(せっかく初めて町に来たんです。素直に楽しまないと勿体ないですね)
舞踏会も竜王陛下への挨拶も最初で最後の体験になる。
これは人生最後の思い出づくりだ。怯んでばかりいては勿体ない。
フィリーネはお腹に力を入れると背もたれから身を起こした。
「ありがとうございます。私もシドリウス様と一緒に準備ができて光栄です。折角なので、いろんなところを見て回ってもいいですか?」
買い物に来てから一度も見せなかった満面の笑みを向けると、シドリウスの顔が綻ぶ。
「もちろんだ。フィーが行きたいところは、どこでも一緒に行くぞ」
フィリーネたちは再び町へと繰り出した。