迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
男たちから散々贈り物を渡されてきただけあって、ミリーネは宝石の価値をそれなりに理解している。ピンクスピネルは希少価値が高く、滅多に手に入れることのできない宝石の一つだ。
稀少な石の指輪をフィリーネに贈るだなんて。あれでは豚に真珠もいいところだ。
指輪を受け取ったフィリーネはというと、満更でもない様子で頬を赤く染めている。
その光景を見てミリーネは悟った。
フィリーネは、あの美青年に恋心を抱いているのだと。
(無理もないわね。あんな美しい青年に指輪を渡されたら誰だって恋に落ちるわ)
大きな宝石の指輪を買えるだけの財力と、品を感じる優雅な所作。
恐らく彼は、どこかの貴族令息で間違いなさそうだ。舞踏会で顔を見たことがないので、地方貴族だろう。
(爵位はアーネスト様の方が上だろうけど、財力でなら負けないんじゃないかしら……)
その上、フィリーネはあの美青年を慕っている。
ミリーネはその様子を見て閃いた。
もしも、社交界のエトワールと呼ばれている自分があの美青年を骨抜きにして奪ったら、フィリーネはどんな反応をするだろう。そして、ランドレイス家でなくても莫大な財力があるなら、あの美青年に貢がせて借金を減らせばいい。これなら一石二鳥だ。
ミリーネは口角を吊り上げる。
「うふふ。今年の舞踏会は全ての上流階級の人間に招待状を送ったって、アーネスト様が言っていたわね。なら、あの美青年も出席するはず。このことはお父様に報告しないといけないわ」
好きな相手を取られて絶望するフィリーネの顔を想像したら、楽しくて仕方がない。
愉悦の表情を浮かべるミリーネは踵を返すと、馬車に乗り込んだ。