迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 屋敷に戻ると、真っ先に書斎へ向かう。
 書斎は葉巻の匂いが充満しているのに加え、どんよりとした空気で重たかった。
 その発信源であるハビエルは席について悄然と項垂れている。
 ミリーネは早速フィリーネの消息について報告した。

「忌み子は生きていたのか? しかも身なりの良い男と一緒だったと。でかしたぞ!」
 ハビエルは机に手をついて立ち上がると歓喜した。
 フィリーネを通してその美青年に頼めば、借金を肩代わりしてもらえると期待しているのだろう。
「お父様、その彼は私が取り入るわ。忌み子には勿体ない相手なんだもの」
 すると、ハビエルが呆れ返る。

「馬鹿も休み休み言え。おまえはアーネスト様の婚約者なんだから火遊びも大概にしろ。それより、アーネスト様に援助の話はしたのか? いくら要求できたんだ?」
 先ほどから金の心配しかしていないハビエルにミリーネが赫怒する。
「そんな話できるわけないでしょう!? だってアーネスト様は……」
 自分に無関心だからと言いかけたところで、パンッという乾いた音が書斎に響いた。

「いい加減にしろミリーネ! おまえは与えられた役目すらまともにできないのか。これなら金持ちの男に取り入った忌み子の方がよっぽどマシだ!!」
 じりじりとした熱を感じる頬を手で押さえる。
 叩かれた衝撃でミリーネの纏めていた髪が解けた。
 生まれて初めて、ハビエルから手を上げられたミリーネは驚きを隠せない。

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