迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


「私はこれから忌み子になりすまして、おまえから恋人を奪うのよ!」
「はい? 恋人!?」

 恋人なんていないのに、ミリーネは誰のことを話しているのだろう。
 思い当たる相手がいなくてぽかんと口を開けていたら、痺れを切らしたミリーネが答えた。

「おまえの恋人――黒髪の美青年よ!」
 黒髪の美青年と言われてようやくそれがシドリウスなのだと合点がいく。
 しかし、フィリーネはすぐに狼狽えた。

「お、お待ちください。シドリウス様は恋人ではありません。それにお姉様にはアーネスト様がいらっしゃいます。バレたら婚約破棄になりますよ!」
「へえ、あの美青年はシドリウスって名前なの。竜王陛下と同じ名前ね。それはともかく、アーネスト様なら大丈夫よ。あの方は驚くほど寛大なの。……腹立たしいくらいにね」


 ミリーネは忌々しそうに呟くと、フィリーネの頭についていた髪飾りを強引に奪った。
 取られた際にフィリーネは髪が何本か抜けて痛かった。側頭部を手で押さえていたら、髪飾りをつけ終えたミリーネの笑い声が聞こえてくる。

「うふふ、どうかしら? まあまあおまえに似ているんじゃない?」
 フィリーネとミリーネは姉妹だけあってどことなく似ている。
 しかし、完璧に成りすますにはやはり無理があった。

 背丈はミリーネの方が高いし、顔立ちだって違う。
 フィリーネは正直に答えた。

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