迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「かつらを被っていてもすぐにバレると思います。お姉様の方が私よりもお綺麗ですし、背も高いです」
「明るい場所でなら一発でバレるわね。だけど、バルコニーのような暗がりなら分からない。身長だってヒールのない靴を履けば少しはその差も縮まるわ」
今夜のフィリーネは三センチのヒールを履いていた。
ミリーネがフラットな靴に履き替えれば、たちまち身長差から来る違和感はなかった。
「極めつけに冴えない顔をしたら……。ほら、おまえにそっくりでしょう?」
ミリーネは姿見の前でしおらしい表情を浮かべてみせる。そうすると、一気にフィリーネの雰囲気に近づいた。
これなら見間違える可能性もなきにしもあらずだ。
命じられるがままミリーネに協力したが、フィリーネは改めて大切なことを思い出す。
「シドリウス様は私の恋人ではありません。こんなことをしても無駄骨を折るだけです」
「忌み子が言い訳をするなんて。そんなに私に取られるのが怖いの?」
取られる、取られないの問題ではない。
シドリウスは竜人だ。その相手は運命の番だけだ。
フィリーネと恋人関係になるなんて天地がひっくり返ってもあり得ない。
したがって、ミリーネがフィリーネに成りすましてどれだけ言い寄ったところで、シドリウスは奪えないのだ。
(そもそもシドリウス様は私のものではないので奪うという表現もおかしいですが。……って、あれ? そういえば、お姉様は私に代わってと仰いました? まさかお姉様は、私に代わってシドリウス様の生贄になりたいのでしょうか!?)
ハッとしたフィリーネは、慌ててミリーネに詰め寄った。