迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「おまえが、フィーに祝福をした闇の精霊だな。守護の魔法のせいで、俺はフィーの存在を感知できなかった」
紫紺蝶の守護の魔法は今も効いていて、離れているフィリーネの存在を感じ取るのは難しい。そもそもシドリウスがフィリーネを番だと認識したのだって、彼女を視界に入れた瞬間だった。
これを解消するために、シドリウスは自分の魔力を込めたピンクスピネルの指輪をフィリーネに贈った。
あの指輪を肌身離さずつけてもらうことで、シドリウスはどこにいてもフィリーネの存在を感じられる。
頭上を舞っていた紫紺蝶がシドリウスのもとへやって来る。何か伝えたいことがあるようで、しきりにシドリウスの周りを飛んでいる。
「どうした? 何が言いたい? 魔力を飛ばしてみてくれ」
シドリウスは紫紺蝶から発せられる魔力で意思疎通を図ろうとする。
その瞬間、フィリーネを助けてという言葉が脳裏に浮かんだ。
「……っ」
シドリウスは血相を変えて走り出す。
大広間は相変わらず大勢の参加者で賑わっていた。
誰かと肩がぶつかろうと構うことなく、シドリウスは目的の場所へと進む。
「フィー、どこにいるんだ? フィー!?」
待たせていたバルコニーに到着するが、そこには誰もいない。
(まさか、誰かに攫われたんじゃ……)
シドリウスは己の危機管理のなさに舌打ちをした。
長い時間、フィリーネから離れるとは思っていなかったので迂闊だった。
紫紺蝶が必死に伝えてくるのだから、きっとフィリーネの身に危険が迫っているに違いない。
乱れた息を整えながら、シドリウスはフィリーネに贈った指輪に意識を集中させた。