迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
第33話 対峙2(シドリウス視点)
シドリウスが声をかけるが反応はない。
「とんだ小物だったな」
立ち上がったシドリウスは、気絶しているハビエルを眺めながら呆れた声で言う。
「いやいやいや。シドリウス様が怖すぎなんですって。あんな風に凄まれたら誰だって気を失います!!」
血の気を失ったヒュドーは自身を抱き締めながら怯えていた。
「大袈裟だぞヒュドー。ちょっと脅かしただけだろう? これは伯爵が勝手に自滅しただけで、俺は物理的に手出ししていない。寧ろ手厚く助けたんだから」
シドリウスは前髪を掻き上げながらふうっと息を吐く。
本当なら発言通りにしても良かったが、それだと君主として民に示しがつかない。
また、アバロンド家の使用人は不公平な魔法契約書を結ばされている。その辺もきちんと調査をして解消しなければいけない。
よって、シドリウスの独断で処罰するのは困難だった。
「魔法契約書を悪用した件について、あとはしっかり法の裁きを受けさせる。伯爵は空都の牢屋に収監しておけ」
「かしこまりました」
ヒュドーは気絶しているハビエルを手際よく拘束する。
そして、グラウクスと共に空都に向かう手はずを整えた。
「フィリーネ様が首を長くして待っています。あとは僕に任せてお戻りください」
「そうだな。今夜はランドレイス公爵の見舞いが目的だったし、それが済んだら屋敷に戻るとしよう」
人払いの魔法を解除して、シドリウスはヒュドーと別れた。
廊下を進んでいると、不意に頭上で僅かに魔力を感じた。
見上げれば、屋敷で見た紫色の蝶がひらひらと飛んでいる。