迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「ああ、陛下は相当お怒りらしい。まったく、誰が陛下の逆鱗に触れるような真似をしたんだ!」
今にも気絶しそうな顔で、公爵は呆然とその様子を眺めた。
「せっかくのお庭が次々と破壊されていきますね。我を忘れているようです」
「竜人が地上で竜の姿に変身するのは余っ程の時だ。あれほど怒っているとなると、静まるのにどれくらいかかるか……」
公爵曰く、竜人は感情が爆発すると収まるまでにかなりの時間を要すらしい。
暴れ回る竜の勢いは、まだまだ収まることを知らない。
綺麗に刈られていた生け垣も、同色系でまとめられた美しい花壇もダメになった。
鞭のようにしなる尻尾が、今度はガゼボにぶつかった。
割れて崩れたガゼボの一部が古城に向かって飛んでくる。
フィリーネが古城にぶつかると確信した次の瞬間、動きがピタリと止まった。
ガゼボの一部が、そのまま下へと落下する。
何が起こったのか目を白黒させていたら、古城から誰かが飛び出してきた。
それはツバメの姿をした精霊を従える、カロンだった。
カロンは瓦礫や木々が古城に飛んでこないよう、精霊と連携していなしている。
他の精霊師一族も古城からやって来ると、カロンに加勢した。
カロンの存在に気づいた公爵は眉を上げる。
「エリンジャー家の者が来ているのか? まさか今日は、舞踏会か!?」
「はい。今日はランドレイス家で年に一度開かれる舞踏会の日です。大広間には大勢の招待客がいらっしゃいます」