迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 暴れ回る竜の攻撃をカロンたちが防いでいる間に、古城一階ではアーネストや公爵家の騎士団が招待客を避難誘導していた。
 話を聞きながら眼下の様子を観察していた公爵は、一度目を閉じる。
 やがて覚悟を決めたように目を開き、フィリーネを見る。

「ここは危ないから、お嬢さんもすぐに避難しなさい。私はランドレイス家の当主として、陛下のもとへ行く」
「えっ、そんな!?」
 フィリーネはギョッとした。
 目覚めたばかりの公爵は、完全に健康な状態とはいえない。

 ミリーネが光魔法で定期的に回復させていたようだが、それでも筋力は衰えている。それに公爵が竜王陛下の前に行ったところで、怒りが静まるとも思えない。
「無理をしてはお身体に障ります。激昂している竜王陛下のもとへ行くなんて危険ですよ!」
 今にも倒れてしまいそうな公爵を、竜王陛下のもとには行かせられない。

 フィリーネは必死に止めに入る。
 しかし、公爵は頑なに首を横に振った。
「お嬢さん、この古城の主は私だよ。不届き者を招待して陛下の逆鱗に触れてしまった。その責任はこの私にある」
 目に強い光を宿した公爵は、ふらふらとしながらも廊下へ出ようとする。

 再び、竜の咆哮が響く。
 フィリーネは振り返って窓の外を見た。
 カロンたちが必死に防いではいるが、このままではいずれ彼女たちの魔力が尽きる。
 彼らを心配していると、目の前に紫紺蝶が現れた。
 紫色の翅からは鱗粉が落ちる。同時に、紫紺蝶が何を伝えたいのかが分かった。

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