迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
『……フィー、なのか?』
正気に戻ったのかシドリウスが擦れた声で返事をする。
「はい、フィリーネです。何に対して怒っていらっしゃるのか分かりませんが、落ち着いてくださ……」
シドリウスが頭を低くしてじーっとこちらを観察してくる。
『頬に怪我をしているぞ。具合はどうだ? ミリーネに傷つけられたんだろう?』
「ああ、これですか?」
なんとも思っていなかったフィリーネは、引っ掻かれた部分に手を添える。
以前にシドリウスはフィリーネの血の一滴でも流れるのを嫌がっていた。
今回彼が暴走したのは、どこかでフィリーネが血を流したのを知ったからかもしれない。
「これはただのかすり傷です。痛くはないので大丈夫ですよ。だからもう怒りを静めてください。私と一緒に屋敷へ帰りましょう」
フィリーネがシドリウスの顔に手を添えると、そのまま頬をぴたりとくっつける。
竜の皮膚は鱗で覆われていて硬く、ひんやりとしていた。それがなんだか気持ちいい。
『……ああ、帰ろう』
返事をしたシドリウスの身体が白い光に包まれ、ボンっという音がした。
辺りは白い煙に包まれる。
霧のように何も見えないでいたら、不意に人間の姿になったシドリウスに抱き締められた。
「フィー、俺を正気に戻してくれてありがとう」
「どういたしまして」
フィリーネはにっこりと笑みを浮かべる。だが、すぐに顔を真っ赤にして懇願した。
「えーっと……お願いですから、帰る前に服は来てくださいね?」