迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 これはフィリーネの推測だが、闇の精霊の魔法には気持ちを落ち着かせる力があるように思う。アバロンド家では不幸を振り撒く存在と頭ごなしに言われてきたが、それは光の精霊と似た魔法を持っているために冷遇されてきたのだろう。

(光魔法は怪我や体力の回復といった身体面に特化していますが、闇魔法は精神面に特化しているんだと思います)
 もしこの推測が正しければ、彼の怒りを静められるかもしれない。
 現に、紫紺蝶のおかげで竜王陛下の動きが鈍くなっている。
 フィリーネは竜の攻撃が当たらないギリギリのところで立ち止まった。

(あれ、この方って……)
 竜王陛下の横顔を見ていたら、不意にある名前が頭を過った。
 フィリーネはあのアイスブルーの瞳に見覚えがある。

 目の前にいるのは、フィリーネの知っているシドリウスだ。
 竜王陛下のシドリウスではなく、一緒に生活をしてダンスを踊った、あのシドリウス。
「シドリウス様!!」
 フィリーネが声を張り上げて名前を呼ぶと、それまで我を忘れて暴れ回っていたシドリウスの動きがピタリと止まった。

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