迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「おまえはわざと一階に上がって来たんでしょ? アーネスト様に見初めてもらおうとでも思ったの?」
「いいえ、決してそんなことは思っていません。ランドレイス様が時間より早くお越しになられたので鉢合わせしてしまったんです」
フィリーネは丁寧に事情を説明するが、ミリーネは自分の見解が正しいとして聞く耳を持たなかった。彼女は席を立つとフィリーネに詰め寄る。
「はっ。そんなの嘘ね。おまえは色仕かけでアーネスト様を落とそうとしたんだわ!」
非難されたフィリーネは小さく両手を挙げて否定する。
「そんな、ランドレイス様を落とすだなんてとんでもありません。私がうっかり落としたのは眼鏡です!」
「はあ?」
「あと、ランドレイス様を落とすなら階段まで誘導しないと無理ですお姉様」
真面目に状況を分析して答えたのに逆効果だった。
ミリーネは何うまいことを言っているんだいうような目でこちらを睨んでくる。さらにこみかみはピクピクと動いていた。
フィリーネは今年の秋で十八歳になるが、恋愛面は疎い。これまで屋敷仕事ばかりしていたこともあり、縁遠いものだったのだ。
「今日私と過ごす時間が減ってしまったのは、おまえがアーネスト様の時間を搾取したせいよ!!」
ミリーネはフィリーネの胸ぐらを掴んで引き寄せると、もう片方の手を振り上げる。
「いけません、ミリーネお嬢様!」
扉の前で控えていたマーシャが咄嗟に声を上げて諌めた。
「そんなことをすれば、闇の精霊が怒ってお嬢様に悪い影響を与えるかもしれません!」