迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 ミリーネもハビエルも紫紺蝶から祝福されたフィリーネには手が出せない。暴力を振るえば、必ず紫紺蝶が不幸を振り撒くと知っているからだ。

 昔、一度だけフィリーネはハビエルに本で頭を打たれたことがある。その後でハビエルは階段から落ち、足を骨折してしまった。さらに、仕事で乗る予定だった船が出港前に沈没するなどトラブルが相次いだ。
 それ以降、ハビエルは紫紺蝶の仕返しを恐れてフィリーネに体罰を与えていない。

 事情を理解していても尚、腹の虫が収まらないミリーネはマーシャをギロリと睨んだ。
「だとしても私とアーネスト様との時間を奪ったのだからそれ相応の罰を受けてもらうわ!!」
 ミリーネは視線をフィリーネに戻すと掴んでいた手を乱暴に放す。続いてサイドテーブルに置いていた本を薙ぎ倒した。完全に八つ当たりである。

 それは植物に関する本だった。
 投げ出された拍子に本が開き、植物のイラストが見開かれる。
 ミリーネはイラストに目を留めた。やがて、閃いたというように口角を吊り上げる。


「良いことを思いついたわ。前に家庭教師から聞いた話だけど――おまえを生贄の花嫁としてアカマツの木と結婚させるわ!!」
「アカマツ、ですか?」

 フィリーネは目をぱちぱちと瞬いてから首を傾げる。
(アカマツは木の名前だと思うのですが……まさか、マツの木と結婚しろって言うんですか!?)

 これまで受けてきた屋敷での罰とはまったく毛色が違っているし、突拍子もない。
 フィリーネは絶句する。

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