迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
成人まで期間を設けることは理に適っている。しかし、数ヶ月という期間は十七歳のフィリーネには長く感じられた。
「シドリウス様、今すぐじゃなくても構わないのでもう少し早く召し上がっていただけませんか? 私、頑張ってみせますから!」
半年じゃなくとも数ヶ月あればきっと肥れるはずだ。
フィリーネが拳を胸の辺りで掲げて意気込んでみせたら、シドリウスがピシリと音を立てるように固まった。
数秒経ち、彼は深いため息を吐く。目の上に手を置いて天井を仰いだ。
「ああ、なんて酷い試練だ。フィリーネ、頼むから俺を誘惑するな!」
誘惑なんてしていない。建設的な提案だと思うのだが。
そう言おうとしたら急に目の前が真っ暗になった。
気づけばシドリウスに抱きしめられているではないか。
耳元でシドリウスの熱を帯びた吐息が聞こえてくる。彼の熱が伝染するようにフィリーネの耳もじんじんと熱くなった。
さらにフィリーネの心臓の鼓動が激しく脈打つ。音が外に漏れ聞こえていないか心配になるほどだ。
「フィリーネが健気で可愛い過ぎて……成人するまで俺は正気を保てるんだろうか」
辛そうな声音で呻くように呟くので、フィリーネは一先ず励ました。
「シドリウス様、私はいつでもお待ちしてますよ?」
「いや、こっちは我慢してるんだからこれ以上煽ってくれるな!!」
「味見くらいは良いと思います!」
「だから、いちいち煽るなって言ってるだろう!?」
こうして勘違いしたままのフィリーネとシドリウスの生活が始まった。