迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 紫紺蝶はフィリーネがこの屋敷に来てからも頻繁に顔を出していた。いつもなら決まって夜にやって来るのに、今回ばかりは心配してくれているのか朝にも訪ねてきてくれている。


「心配してくれているんですか? 私ならもう大丈夫ですよ。シドリウス様たちのおかげで元気になりましたから」
 二匹の紫紺蝶はフィリーネの頭上を舞いながら紫に光る鱗粉をかけてくれる。この鱗粉には不思議な効果があり、浴びると心が落ち着いてよく眠れるのだ。
 フィリーネは頭上を飛ぶ紫紺蝶に向かって人差し指を差し出した。

 二匹の紫紺蝶は鱗粉を振り撒くのをやめると、交わって一匹になる。続いてフィリーネの指に留まった。
 翅をゆっくりと動かしながら休む姿は愛らしい。

 因みに、精霊の姿形は様々だ。ミリーネの契約している精霊は猫の姿をしていて、光の精霊の名に相応しく毛並みは黄金色でキラキラと輝いていた。
(紫紺蝶を贔屓しているのかもしれませんが、この子に言い伝えのような危険性はないと思います。闇の精霊は本当に光の精霊の天敵なんでしょうか?)

 疑問を心のうちで呟いていたら、控えめなノック音が聞こえてくる。
 人差し指に留まっていた紫紺蝶がふわりと飛び立つ。何度かフィリーネの周りを飛んだ後、窓をすり抜けて姿を消してしまった。


「どうぞ、入ってください」
 フィリーネが声かけをすると、扉からひょっこり顔を出したのはカロンだった。
「おはようございます。お嫁様」
 カロンは丁寧にお辞儀をして挨拶してくれる。

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