迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
動きやすい黒のワンピースに、白のエプロン、メイドキャップ。侍女の格好をしているが、品の良い佇まいをしているのでドレスを着ればたちまち淑女に様変わりしそうだ。
見た目の印象から、恐らくカロンは二十歳くらいだろう。栗色の髪は綺麗にまとめ上げ、微睡むような杏色の瞳はおっとりとした印象をこちらに与える。
「お召し物を準備したのでございますよ」
カロンは抱えていた服をベッドの上で広げてみせる。
「わあっ!」
フィリーネは目の前の服を見て感嘆の声を上げた。
丸襟のレースと膨らんだ袖が可愛らしい、卵色のワンピース。スカートの裾には小ぶりな草花が緑の糸で織りだされている。
これまでまだら模様のごわごわなワンピースを着ていたフィリーネにとって、用意されたドレスは天にも昇る心地がした。
「とっても素敵です。今着ている服も着心地が良くて最高ですよ」
実はフィリーネが着ている服はすべてカロンのお手製だ。
何でも、カロンの趣味が服作りらしく、彼女の部屋にはたくさんの服が衣装ケースに眠っているらしい。
「ただの趣味ではございますが、針子冥利に尽きるのでございます」
お礼を伝えたフィリーネは、ワンピースを持って間仕切りの後ろに回って着替え始める。
初めて袖を通すワンピースは肌触りが良く、心地が良い。
着替えを終えたフィリーネは姿見の前に立ってみる。
ひび割れた眼鏡をかけているところだけが残念だけれど、鏡に映る自分が自分じゃないみたいな気がしてなんだか照れくさい。
「よくお似合いでございます。せっかくなので御髪も整えさせていただきます」
カロンはフィリーネの後ろに立つと、櫛で梳かしながら白銀の髪を簡単にまとめてくれる。背の高いカロンの顔が鏡越しにうっとりしているのが見えた。