迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 必死の形相でシドリウスから説得されたフィリーネは、渋々チョッパーナイフをテーブルの上に置く。
(うーん、味見くらいしても良いと思うのですが。シドリウス様はストイックなお方なのですね)

 小指を斬り落とすのは痛いし怖いし、正直なところ何もせずに済んだのはありがたい。
 けれど、成人するまで正気を保てる気がしないとシドリウスが言っていたので、少しでも自分を食べて満足してもらえたらと思っての行動だった。

 何故ならフィリーネの使命は、シドリウスに美味しく食べてもらうことだから。
「……カロン。どういうことか説明を」

 シドリウスが尋ねると、入り口近くで控えていたカロンは一歩前に出て答える。
「どういうことかと仰られましても、わたくしはお嫁様のご意向に沿ったまででございます。わたくしとしましては、シドリウス様が仰いますように成人するまで待った方が良いと思ったのですが、お嫁様があまりにも熱心だったので協力してあげたくなったのでございます」

 シドリウスは本を閉じるとこめかみを押さえる。次に鋭い視線でカロンを睨めつけた。
「だからって刃物は渡すべきじゃないだろう。万が一、フィリーネが怪我をしたらどうする? おまえはどう責任を取る?」

 冷え冷えとした低い声にフィリーネの体感温度が三度下がった気がした。
 このままではシドリウスがチョッパーナイフでカロンの首を飛ばすのではないかと心配になるくらいだ。それくらい、シドリウスからは殺気が伝わってくる。

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