迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「簡単な報告をしに行っただけですので。空都の者たちは大喜びでしたよ。父なんてこの上ない僥倖だと落涙しておりました。百年探し続けて見つからなかった花嫁がようやく見つかったんですから、無理もないですよね」
「おまえの父、エリンジャー公爵には番を見つけろと百年前から口喧しく言われていたからな。喜んでもらえて何よりだ」
空都で暮らせるのは、君主であるシドリウスと家臣のエリンジャー公爵家とその傍系のみ。公爵家の人間はシドリウスの眷属として百年以上生きているため、公爵もヒュドーも見た目とは違い百歳を優に超えていた。
「皆、竜王陛下であるシドリウス様と百年ぶりに会えるのを楽しみにしています」
シドリウスはただの竜人ではなく、オルクール王国を総べる国王だった。
――現竜王陛下に逆らってはいけない。人間とは違い、温情の欠片もないお方だから。
シドリウスがそんな風に語り継がれているのは、二百年前に腐った貴族たちを一掃したことに起因する。
そもそも何故シドリウス自ら手を下したのかというと、前竜王を務めた竜人・ギデリウスが貴族たちに甘い顔をしていたのがいけなかった。
彼らはギデリウスに政治手腕がないのを良いことに、自分たちの都合の良い法律を次々と作っていった。そのせいで国力はガタ落ちし、かつての栄光は見る影すらなくなった。
自分が国王を続ければ国が滅ぶと危惧したギデリウスは、シドリウスに玉座を明け渡した。