迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~

第13話 竜王陛下(シドリウス視点)



***

 普段のラフな格好から正装に着替えるため、シドリウスは用意されていた白シャツに袖を通していた。袖口の白蝶貝のボタンを片手で留める。
 ふと、姿見に映る自分と目が合った。

 冷酷無比で厳しい(いかめしい)と恐れられているアイスブルーの瞳は、目尻が垂れている。口元は緩み、自分でも嬉々としているのが一目瞭然だった。
 シドリウスは眉を顰めるが、すぐに肩を竦める。

「これから空都に帰還だというのに。こんな締まりのない顔は周りに示しがつかないな」
 開け放っていたバルコニーの窓からそよ風が吹いてくる。
 風から魔力を感じてバルコニーへ顔を向けると、ヒュドーが欄干の上で宙に浮いていた。

「ただいま戻りました」
 ヒュドーは階段を下りるように空中を歩き、床に足がつくと一礼してから部屋の中に入ってくる。彼の近くでは緑色をしたフクロウが飛んでいた。

 実はヒュドーは風の精霊と契約を結ぶ精霊師だ。風を操って攻撃や防御ができるだけでなく、空を自由に飛び回れる。

「ありがとう。グラウクス」
 ヒュドーがお礼を伝えると、フクロウの精霊が「ホー」と鳴いてポールハンガーに留まる。

「帰ってくるのが早かったな」
 シドリウスが声をかけると、ヒュドーがウエストコートを手にして着替えを手伝い始める。

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