迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


「フィリーネは夢塞病を治す力を持っているのだろうか?」
 疑問を口にすると、側で書類を確認していたヒュドーが顔を上げた。

「僕的には単なる偶然かと思うのですが……まさか愛の力というやつですか?」
「愛の力か。そうなら喜びたいところだが違うな。上手く説明はできないが、フィーと一緒に眠る時は普段の彼女とは違う力――精霊の魔力が僅かに働いている」

 シドリウスの言葉にヒュドーは眉を上げた。
「精霊の魔力ですか? でも、フィリーネ様は精霊と契約はしていませんよ? ちゃんと僕が確認済みです」
 ヒュドーは世間話の延長で、フィリーネに契約している精霊がいるかどうかを質問し、はっきり契約していないと聞いていたのだ。

「そうだな。俺もフィーが精霊と契約している風には見えないし、そんな魔力も感じなかった」
 竜人は他の生き物の魔力を感じ取れる。人間が精霊と契約を結んだ場合、精霊の魔力属性が人間にも色濃く反映されるため、意識すれば精霊師だと判断ができる。

 フィリーネは光の精霊師一族の一人だ。契約する精霊属性は光の可能性が最も高い。
 ところが、微かに感じた精霊の魔力は光と言い切れなかった。寧ろ、光とは相反する闇の魔力といった方がしっくりくる。

(気になるのは、最近屋敷の周りを闇の精霊が飛んでいることだな)
 黒色に発光した紫の蝶がひらひらと飛んでいる姿を数回目撃している。
 あの蝶が姿を見せ始めたのは、フィリーネがこの屋敷に来てからだ。もしかすると、闇の精霊とフィリーネには何か関係があるのだろうか。

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