迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「精霊と言えば、アバロンド家の調査は進んでいるか?」
「もちろんです。つい先日、年齢を理由に辞めた馬丁を見つけ出しました。彼によると、あの家で働く使用人は屋敷に入る前に必ず魔法契約書を結ぶらしいです」
「なるほど。大量に魔法契約書を申請していたのは、使用人との契約に使うためだったのか」
合点がいくが、腑に落ちないところはまだあった。
「どうして使用人を雇い入れるだけなのに、魔法契約書を結ぶ必要がある? 普通は大がかりな取引や共同事業の際に使うものだぞ」
魔法契約書の最大の利点は裏切りを防ぐ点にある。
万が一、どちらかが違反したら青い炎で焼かれる魔法が施されている。
炎は水をかけても消えず、違反者を焼き尽くすまで燃え続ける。死をもって償わなければいけないのだ。
「使用人と魔法契約書を交わすほどだ。世間に知られたらまずい事情でもあるんじゃないのか?」
「それは恐らくフィリーネ様を虐げている件だと思います。フィリーネ様の名前を出した途端、馬丁はあからさまに態度を変えましたので」
社交界でのフィリーネは病弱な令嬢として話が通っている。もし真実を世間に広められたらアバロンド家の醜聞となって、他の貴族たちから白い目で見られるだろう。
その真実を覆い隠すためにアバロンド家は使用人と魔法契約書で雇用を結んでいる。
絶対にこの秘密が露呈しないように。
ところが、答えを導き出せたと思った途端、シドリウスの頭の中で新たな疑問が生じた。