迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「雇われる側の人間全員が魔法契約書に納得しているとは限らない。もしも後ろ暗い内容なら、必ず正義感の強い者はよく思わないだろう。その人間を探し出せばいい」
「……そう言えば、馬丁がフィリーネ様は気の毒なお嬢様だと言っていました。使用人の皆がそう思っているとも。案外、協力してもらえる人間はいるかもしれません!」
ヒュドーは活路を見いだしたという風に目を輝かせる。
「となると、休みで町に出て来ている使用人を当たってみるのは手ですね」
「そうだな」
あれこれ計画を立てるヒュドーに対して、シドリウスは平静を装いながら相槌を打つ。
しかし、内心は怒り狂っていた。悟られないよう、指先が白くなるほど強く握り締める。
竜王という立場でなければアバロンド家に乗り込んで伯爵を脅し、魔法契約書を取り上げていた。そして契約書の内容など関係なく、これまでフィリーネが辛酸を嘗めた数だけの苦しみを与えていただろう。
しかし、あと一歩というところで理性が勝ち、なんとか踏みとどまった。
(まだ手を下す時期じゃない。すべての証拠が出揃うまで手出しするなとヒュドーから言われているじゃないか)
シドリウスは何度も自分に言い聞かせる。