迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
(私が成人する前に永眠されたら大変です。あと、シドリウス様には最高のコンディションで召し上がっていただかないと。生贄の花嫁を食べる機会は早々ないと思いますので、寝不足で美味しく感じられなかったら最悪ですから)
眠りが永眠ではなく安眠になるよう、フィリーネは引き続きシドリウスの役に立つため、彼のもとへ通おうと誓った。
「クッキーは美味しいか?」
いつの間にかシドリウスがフィリーネの隣に腰を下ろす。たいてい彼がフィリーネのもとにやって来るのは仕事に区切りがついた時だ。
フィリーネは「はい」と返事をしてから、シドリウスにクッキーを勧めた。
「こちらを召し上がってください。甘い物を食べて疲れを取りましょう」
使われていない取り皿に二種類のクッキーを数枚のせ、シドリウスの目の前に置く。
すると、シドリウスは不満そうに口を尖らせた。
「甘いものを食べるよりも俺はフィーに疲れを取ってもらいたい。……いや、味見の意味じゃないぞ。頼むから期待の眼差しで圧をかけてくるな!」
言葉の綾だと言われ、目を輝かせていたフィリーネは肩を落とす。
「ごめんなさい。私ったらてっきり、その気になられたのかと」
シドリウスは小さく息を吐くと前髪を掻き上げる。
「そうがっかりしないでくれ。俺が悪いことをしたみたいじゃないか」
「その言い方ですと心境に変化があったのではと思って、期待してしまったんです」
シドリウスからは成人するまで食べないと散々言われている。
頭の中では分かっていても、期待で胸がいっぱいになって先走ってしまうのだ。
しょんぼりしていたら、シドリウスが取り皿のスノーボールクッキーを手に取り、フィリーネの口もとへ運んでくる。