迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「……今のは反則だろ。どれだけ俺を翻弄する気だ」
「それはどういう意味でしょうか?」
こちらとしては誘惑したつもりはないので、頭の上に疑問符を浮かべるしかない。
フィリーネがきょとんとしている間に、シドリウスが手首を掴んでくる。
手首を引き寄せたシドリウスはスノーボールクッキーをぱくりと食べた。
それもフィリーネの指と一緒に。
不意打ちを食らったフィリーネは呆気に取られる。
「……い、いい今のは、心臓に悪いです!」
「当然。俺を翻弄した仕返しに決まってるだろ?」
顔を真っ赤にして抗議するフィリーネに対して、シドリウスはフッと笑った。
クッキーを食べたあとも、二人で他愛もない話を続ける。
シドリウスはフィリーネのどんな話にも傾聴してくれる。アイスブルーの優しい眼差しは慈愛に満ちていて、何でも受け入れてくれている気がした。
「なあ、フィー」
「はい。なんでしょうか?」
「カロンから聞いていると思うが、成人したら空都の舞踏会に出てもらう」
フィリーネは色を正した。件の話はシドリウスからもされるだろうと思っていたからだ。
「はい、伺っています。ですが、私がシドリウス様と一緒に踊るなんて恐縮してしまいます」
「俺もあまり公に顔を出すのは好きではない。だから軽く挨拶をして、一曲踊ってから帰るつもりだ」
空都の舞踏会は貴族たちにとって名誉ある宴で、招待された貴族のほとんどが一堂に会するという。
それに伴い、カロンからこの国の貴族について詳しく教えてもらった。
フィリーネはそこで始めて実家のアバロンド家がこの国唯一の光の精霊師一族で、有力貴族の一つだと知った。