迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


(お父様もお姉様も参加されるでしょうね。特にお姉様は『社交界のエトワール』という異名がついているくらいですから)

 フィリーネは一抹の不安を覚える。
 もしも空都の舞踏会でミリーネと鉢合わせしたら、どうすればいいだろう。

(お姉様は私がマツの木に嫁いだと思っているはずです。シドリウス様の隣にいると知ったらお怒りになるでしょうか?)

 いろいろと想像を巡らせてみるが、罵詈雑言を浴びせられる未来しか見えない。
 とはいえ、フィリーネの生贄の花嫁という身分は変わらない。相手がマツの木からシドリウスに変わっただけなのだから。

 とどのつまり、現在進行形で務めを果たしていることになるので、疑われたらシドリウスが新たな結婚相手だと答えるしかないだろう。

(ですが、それは最悪の場合の話です。舞踏会は大勢の貴族が参加するようですし、シドリウス様は人前に出るのは苦手と仰っていました。長居しなければお姉様と会う可能性は低いかもしれません)
 思案していたら、シドリウスの大きな手がフィリーネの頭を撫でてくれた。
 どうやらこちらが不安を覚えていることに気づいたのだろう。

「案ずるな。誰もフィーに手出しできないし、指一本触れさせない」
 そうは言われても、この国の君主である竜王陛下のシドリウスなら、フィリーネを八つ裂きにするくらい造作もないだろう。

(今の私ではまともに踊れません。もし竜王陛下の逆鱗に触れてしまったら……冷酷無比と称されるだけあってその場で虫をひねり潰すように殺されるのではないでしょうか)

 たちまち、背筋に寒気が走る。
 ミリーネたちのことに加えてダンスもあるとなれば、問題は山積みだ。
 無事に終えられるか、今から気が気でない。


 すると、見かねたシドリウスがある提案をしてくれた。
「カロンがドレスを作ってくれているが、それ以外にも靴や小物が必要だ。気晴らしも兼ねて町に買い出しに行かないか?」
「町にですか?」

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