破断直後のEt cetera
 
 詩太さんがスマホを取り出し、アパートの駐車場の門を開ける。

 地下にゆっくりと入っていき、駐車位置に停めたところで、私は自分のシートベルトを外そうとした。

 
「おい。今度は俺が質問する番。」


 シートベルトのボタンを手で遮られて、助手席のシートが後ろに倒された。


「きゃあっ」

 
 私が押し倒されたというよりも、詩太さんが助手席を押し倒したと言った方が正しい。

 シートに腕を乗せ、私を斜め上から見下ろしてくる。

 ネクタイを緩ませる手つきに思わず見惚れる。 

 何このシチュエーション。最の高なんですけど。

 
「最近やけにスカート履いてるよな? 髪も下ろしてるし。なんでだ?」


 仕事のことでも質問されるのかと思っていたら、全くの予想外だ。

 自分の格好を指摘されて、先週買ったばかりのスカートのプリーツを広げて見せる。


「えへ。そろそろ女らしくなろうかなあって。かわいい?」

「なんで今さら?」

「ほら、高坂さんていっつも髪の毛ツヤツヤで、タイトスカートがすっごい似合う体型だし。私も見習わないとなあって。」

「なんで高坂を手本にすんだよ。未怜は前の未怜のままでいいだろ。」

「嫌。嫌だよ! だって前の私じゃ詩太さんに振り向いてもらえないだもん!」


 なんで詩太さんに身なりのチェックをされなければならないのか。お兄ちゃんみたいで腑に落ちない。

 営業本部にいた時は、詩太さんとの間に会話がなかったから良かったものの、もし詩太さんがグローバル部の部長になったら色々と注意されそうだ。

 少し面倒くさそうだと思った。


「楢崎にも他の社員にも、未怜のかわいさに気付かれると俺が困る。かわいくなるのは俺の前だけにしろ。」


 シートベルトに挟まれたまま、詩太さんの唇が私の唇をついばむ。

 彼の白桃の甘さが香って、自分のお酒臭さに思わず口を塞いだ。


「ま、待って! 私今お酒臭いです!」

「手をどけろ。どけないとこっちに手を突っ込む。」


 詩太さんの固い指が、スカートの裾をまくって膝を撫でる。

 すぐに太ももに熱が集まり、もぞりとお尻を動かした。

 詩太さんのいじわるな口角が上向きになる。

 そっと裾から入ってきた指が、私の内ももをなぞっていく。

 早く到達してほしいようなほしくないような。もどかしい気持ちを我慢しようと、口を指の甲でぎゅっと抑える。

 でも彼の指が脚の付け根に触れた瞬間、自分でも信じられないような高い声が出た。


「ひゃんッ」


 すると抑えていた口元が顕になり、その隙を狙って詩太さんにキスをされる。

 歯列をなぞられ、彼の舌が私を陥れようと、口内の壁をやんわりと貪る。 

 唇を離されたタイミングで、ぷはっと息継ぎをした。


「……やべえな。このままじゃ一生車を降りられそうにない。」

「だったら早く降りようよ!」

「あともうちょっとな?」


 焦らされながら与えられる緩急のあるキス。

 久々の甘い刺激に、私はゆっくりと堕ちていくのだった。







【Fin】







< 124 / 124 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:16

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

Re:Romance

総文字数/119,963

恋愛(オフィスラブ)112ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
モデルとして一斉を風靡した叶恵里夏28才。引退後は地味子を装い、中古車販売会社に勤務していた。 同じ会社の新車販売営業として働く実来心晴26才とは、高校生の頃一夜の関係を持った間柄。その時、里夏は心晴のことを「一夜限りの関係」と割り切り潔く振った過去から、現在会社では心晴にその過去を利用し脅され、セフレ関係を強要されていた。 しかし本当は、高校生の頃里夏が心晴に「一夜限りの関係」だと言ったことには理由があった。
愛が重いNo.1ホストに追われています。

総文字数/38,186

恋愛(オフィスラブ)36ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
No.1キャバ嬢対No.1ホスト。昼も夜も恋の攻防戦。
こっから先ははじめてだから

総文字数/95,809

恋愛(純愛)151ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話からの長編大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀𓂃𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀ 小さな不思議ちゃんと、冷淡冷徹無表情の関西弁スパダリ先輩との日々。 (情報量過多) 𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀𓂃𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop