破断直後のEt cetera
「仕方ねえだろ。俺は十二村製薬の後継なんだから、他の部署も経験しなきゃなんねえんだよ。」
「だからといって、僕と十二村じゃ絶対反発し合うよね?」
「楢崎は柔軟性がある分、正確性に欠けるからな。」
「十二村はきっちりしすぎてて、柔軟性がないもんね。」
「部長と課長で派閥が出来たら最悪だな。」
「その時はほら、大路さんがどうにかしてくれるでしょ?」
課長に話を振られて、咀嚼中の厚揚げを急いで飲み込んだ。
「そうですね。はい。私にお任せ下さい! 多分、きっと恐らく……なんとかしてみせます!」
「よろしく。」
「よろしくね、大路さん。」
2人に念を押されて、微妙な心持ちになる。苦笑いで誤魔化しておいた。
アイスティーと白桃ジュースしか飲んでいない詩太さんは、今日は車だ。
楢崎課長と吉香と別れて、私は詩太さんの車に乗り込んだ。
日本酒を3杯程度にとどめておいた私は、今日は頭がはっきりしている。
グローバル部への異動について詩太さんに問い詰めた。
「詩太さん! 私詩太さんがグローバル部の部長候補に上がってるなんて聞いてないんだけど!」
まだビニールに入れられたままのスーツが3着、後部座席に置かれている。
忙しいのを言い訳に、車の中を片付けられなかったらしい。
今日私は、詩太さんのおうちに泊まりに行くことになっているのだ。
「俺だってつい3日前に聞かされた話だ。父親から直接言われたんだよ。」
3日前でも今日だとしても、いくらでも私にメッセージが送れたはずだ。
苦々しい顔をして隣を見れば、詩太さんが「なんだその変な顔」と私の方も見ずにつぶやいた。
「なんで楢崎課長は知ってるのに、私には言ってくれなかったの? 私だってグローバル部の秘書なのに!」
「あのなあ。楢崎はたまたま社内で顔を合わせたから伝えただけだ。そうぺらぺらと内部事情を逐一話せるかよ。」
「もう! いっつも詩太さんは楢崎課長に構ってさあ! 同期だからってちょっと仲良すぎじゃない?!」
2人は、玄也さんの居酒屋へ未だに週に一度のペースで飲みに行っているらしい。
私なんて、こうして詩太さんと2人きりで会うのは約3週間ぶりだというのに。楢崎課長を優先しすぎじゃないだろうか?