破断直後のEt cetera
「おい、聞こえなかったのか? さっさと戻れ!」
ああコイツ――。散々私を空気のように扱ってきてこの仕打ち。返り討ちにしてくれるわっ!!
後ろのドアを、思わず拳で叩きつける。
十二村部長を力強く睨みつけた。
「ハア?!! なんでそんな態度で部長から言われなきゃなんないわけ?! それはこっちのセリフですよ!!」
「――――は、」
「ふざけんじゃないわよこの見せかけ御曹司!! 婚約破棄だぁ?! んなもん私の方からお断りですよ!!」
自分の息が切れているのがよく分かる。どれだけ声を吐いても収まらないこのわだかまり。
言いたいことは山程ある! 初めて会った日からこれまで私はどんな思いであんたのことを――
「ふざけんなよこのムッツリ野郎! あんたなんてこっちから願いさげだわ!!」
部長室で叫ぶ私の姿を、ぽかんと呆けて見ている十二村部長。
もう私の怒りは自分でも止められず。そのままドアを開けて、十二村部長に向けて笑顔で伝える。
「今日限りでこの会社を辞めます。お世話になりました!」
ドアを閉めて自席に戻れば、高坂さんと他の秘書2人が、こわごわと私を見た。
「高坂さん、部長の出張申請し直しますので、正しい情報をいただけますか?」
「あ、うんそれはもう大丈夫! 私がちゃんと再申請しといたから!」
「そうですか。」
それだけ言って、最後に本日の業務報告と総務部へのメールを入力する。
『本日を持ちまして大路未怜はこの会社を辞職したいと思います。つきましては下記メール宛に退職願いの雛形を送信していただきたく存じます。』
総務部へメールを送信して、パソコンの電源を切る。
ロッカーにある自分の荷物を、常備していた紙袋に詰め込んだ。
「お先に失礼します。さようなら。」
高坂さんと秘書2人に深々と頭を下げる。
皆目を丸くするばかりで、私にかける言葉が見つからないらしい。
散々私の陰口を叩いてきた秘書2人と、私へのあてつけのように十二村部長との仲の良さを見せつけてきた高坂さん。
最後の挨拶なんてこれだけで十分だ。
10階からエレベーターで下り、18階建てのオフィスを颯爽と出る。
オフィスを見上げれば18階もあるようには思えなかった。なぜこんな会社とオージスは繋がりを持っていたのか。
自分がどれだけの想いで詩太さんに恋い焦がれていたのか。そのために努力してきたものは数しれず。全てが水の泡だ。
でも
(オージスの未来のために努力したと思えば、私の努力は何一つ無駄じゃない。)
詩太さんとどうやってコミュニケーションを取ろうかと、必死になっていた自分を思い返せばなんとも馬鹿らしい。
パンプスを踏みしめ、私は十二村製薬から前に進み始めた。